二○○○年初頭、東京都千代田区永田町、第一議員会館内の会議室に三人の男が集まった。 「この部屋のおおよその絶対湿度、水蒸気分圧はわかりますか?」 江本は初対面の挨拶もそこそこに、東大工学部出身のエリート技術官僚をいきなり問い詰め 五三年生まれの和泉は、七六年に入省し、八六年に高崎市都市計画部長、九六年に本省の住 宅局住宅生産課建築生産技術企画官、九八年に同住宅生産課長に就任している。後述する「品 確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律こを彼は手がけている。 かし 品確法は、建設業界の反発を受けながら、住宅の質の向上を「暇庇担保責任」によって業者 に義務づけた、画期的ともいえる法律だ。 質問主意書への政府答弁を実質的にとりまとめていたのは和泉だった。実務は部下の課長補 佐が担当したが、過去のデータや技術的な知識は彼の頭に入っている。 「これ、ご存知ですか?」 江本は、空気と水蒸気の温度変化に応じた圧力や重量をまとめた「湿り空気線図」を持ち出 と応えた。 た 。 和泉洋人・建設省住宅局住宅生産課長(当時)は、室内をぐるりと見回し、「わかりません」



2012 室内をぐるり